シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

蛙たち創業60周年記念コンサート

3月7日、8日に開催された「蛙たち創業60周年記念コンサート」を、万感の思いで観覧した。 銀座のシャンソニエ「蛙たち」は、世の中がコロナ禍の自粛生活を強いられたなか、ライブ配信を始めた。お店を存続させるための鋭意努力を感じるとともに、私が住む…

シャンソン歌手としての佐藤美子

シャンソン歌手としての佐藤美子 佐藤美子さんは、戦前から戦後にかけて声楽家として活躍した。日本人の父とフランス人の母のハーフで、日本で声楽家として大成したのちにフランスに渡りさらに研鑽を積んだ。ビゼーの「カルメン」は彼女の代表的な演目で、「…

松島詩子とシャンソン

松島詩子とシャンソン 朝の連続ドラマ「ブギウギ」の影響で、戦時下の音楽の検閲についての関心が高まっているようだ。ドラマにも登場する淡谷のり子さんが、当時の軍部から猛攻撃を受けたことは有名であろう。その一方で、歌手の松島詩子さんは例外的に検閲…

岩見沢「シャンソン酒場peuple」の記

2023年12月20日1年ぶりに、岩見沢「シャンソン酒場peuple」へ。多分日本で唯一シャンソンのレコードを聴かせてくれるシャンソニエ。 マスターにカトリーヌ・ソバージュのレコードをリクエスト。 そして世間話をしたあとに、リクエストしていないのに、セル…

銀巴里20周年記念コンサートのプログラム

1969年6月5日(木)、サンケイホールにて「銀巴里創立20周年記念シャンソンフェスティバル」なる催事が開かれた。そのプログラムを手にいれたので一日中眺めていたが、ステージの豪華さといったら目を見張るばかりだ。 美輪明宏さん(当時は丸山姓)を筆頭に、宇…

東京新聞、越路吹雪特集

東京新聞1月4日夕刊は、越路吹雪さんの生誕100年の特集。ミュージカル俳優の鹿賀丈史さん、シャンソン歌手の八田朋子さん、ソワレさん、峰が越路さんの魅力を語っております。 取材してくださった共同通信社の女性記者さんは、私と同い年でした。越路さんの…

1982年の「BRUTUS」はフレンチ特集

12月29日はシャンソンの日なので、最近読んだ雑誌を紹介します。 「BRUTUS」1982年8月15日号は、「悦楽のフレンチ・スタイルが気になる」と題した特集が組まれている。パリの観光スポット、ブティック、レストラン、酒場にいたるまで、魅力溢れるカテゴリー…

照井詠三がラジオ番組で取り上げられた!

12月24日(日)午前0時、ラジオ番組「MIDNIGHT POETS 誰も整理してこなかったポエトリー史」(渋谷のラジオ)にて、日本で最初に日本語とフランス語の折衷でシャンソンを歌い、詩の朗読運動を牽引した照井詠三を取り上げてくださった。 出演者の詩人・村田活彦様…

高野圭吾さんの絵画

高野圭吾さんの絵画を手に入れた。 高野さんは、シャンソンの訳詞家にして歌手、そして東郷青児のもとで絵を学んだ画家としても活躍された。 この作品は、高野さんと交流があったシャンソンファンの方が急逝され、ご遺族様やゆかりのあった方々がご相談され…

土岐雄一郎さんと「六味唐辛子」

土岐雄一郎さんと「六味唐辛子」 土岐雄一郎さんといえば、シャンソンのピアニストとして知られている。昨年亡くなった藤田順弘さんが「伴奏は、土岐さんと綾部肇さんが良かった」と語っていたのを思い出す。また、全音楽譜出版社から刊行されている楽譜集『…

蜂鳥あみ太=4号さんのライブを鑑賞

Barタートルヘッズに於ける、蜂鳥あみ太=4号さんのライブを鑑賞した。 退廃美の画家、ピエール・モリニエを彷彿とさせる、全身網タイツ姿でシャンソンを歌う蜂鳥さんのステージに、私はいつもシビれてしまう。それは、蜂鳥さんのパフォーマンスの豊かさゆえ…

悼・山上悦男様

昨日訃報に接した山上悦男さんを、私は舞台照明家として存じ上げていた。本日、『シャンソンマガジン』編集長の山下直樹さんが、山上さんが生前執筆した寄稿文を投稿され、それを通じて氏の経歴を知るに至った。 高校卒業後に、舞台照明の研究生になり、それ…

八田朋子さんのライブに行く

「八田朋子さんのライブに行く」 苫小牧のシャンソニエ「カプリス」にご出演の八田朋子さんのステージを観覧する。 八田さんのステージを観たのは、コロナ禍のさなかに銀座のシャンソニエ「蛙たち」がはじめたライブ配信がきっかけであった。「蛙たち」では…

『シャンソンマガジン 2023年秋号』寄稿

このたび、『シャンソンマガジン 2023年秋号』(歌う!奏でる!プロジェクト)内の、「追悼 堀内環様CD紹介」に寄稿しました。執筆しながら、昨年逝去されたシャンソン歌手・堀内環様の深い魅力を改めて感じた次第です。マガジン付属のプレミアムCDには、堀内…

戦時下のシャンソンのレコード

戦時下のシャンソンのレコード 太平洋戦争中の昭和17年9月、ディック・ミネが、「三根耕一」の日本名でシャンソンのレコードを2枚吹き込んでいたことを知り、驚いた。 ・『巴里の屋根の下/巴里祭』(テイチク.T3363)・『プレジャンの舟唄/マドロスの唄(イ…

花田和子様のステージを観覧

上野「Qui」における、花田和子様とご門下生のステージを観覧する。 先日、花田様は歌手生活60周年を迎えられた。ステージで歌われる花田様を拝見していると、目の前に桜吹雪が舞い散る幻影が脳裏に浮かんでくる。ピンク色の花びらが風に散る様は美しい。そ…

ダミア来日公演の新資料

ダミア来日公演に関わる、新資料を入手した。 シャンソン歌手のダミアは、昭和28年4月28日に来日し、5月3日より東京をはじめとする6都府県で『フランスのシャンソンはダミアとともに』というコンサートツアーを行っている。そして、5月25日から27日にかけて…

『あべっく・る・たん』という雑誌

『あべっく・る・たん』という雑誌 数年前、札幌のシャンソニエには『プチるたん』という冊子が置いてあった。全国のシャンソニエの店名と住所、1ヶ月の出演者のスケジュールが掲載されているもので、これを読みながら当時の私には異国の地だった遠い本州を…

島本弘子様&大平信幸様のライブを観覧

札幌グラウンドホテル「オールド・サルーン」における、島本弘子様と大平信幸様のライブを観覧した。 島本様はサロンの客席を歩きながら登場し、ステージでも高らかに歌い上げられた。この華やかさは、グラスのなかで踊るワインのようだ。島本様のプログラム…

二宮眞知子様のステージを観覧

その方が楽屋からステージに姿を見せたときには、花びらが舞い込んできたと思った。 新宿「シャンパーニュ」における、二宮眞知子様のステージ。赤いワンピースの二宮様は、まさに花であった。二宮様は、ワンステージで5曲ずつ歌われたが、荻窪「リラ」での…

出口美保様のステージを観覧

その方が楽屋からステージに現れたとき、小さなお姿に驚いた。ゆっくりとマイクスタンドまで歩まれ、ピアノにもたれてお顔をあげたとき、その眼光の鋭さに居抜かれた。 大阪ベコーにおける出口美保様のステージを、長年の念願叶って観覧した。出口様のシャン…

日本最初のシャンソンの楽譜集

「日本最初のシャンソンの楽譜集」 日本最初のシャンソンの楽譜集は、昭和13年に倉重瞬輔(舜介)さんが編集した『シャンソン・アルバム』(シンフォニー楽譜)だと言われています。これは、菊村紀彦さんの本『ニッポン・シャンソンの歴史』のなかに、次のように…

なぜ日本のシャンソン歌手は、カンツォーネを歌うのか

「なぜ日本のシャンソン歌手は、カンツォーネを歌うのか」 日本の音楽史のなかで「カンツォーネ元年」を決めるとすれば、1958年(昭和33年)らしい。この年、イタリアの流行歌にしてサンレモ音楽祭の入賞曲「ヴォラーレ」(ドメニコ・モドゥーニョ)が、アメリカ…

中村力と五人の美魔女

2023年3月31日、上野「Qui」にて催された「中村力と「五人の美魔女」」の昼公演を観賞した。なお、槇小奈帆様はご事情があり欠席され、四人の美魔女のステージであった。 強行の日帰り旅行に加えて、突然の飛行機遅延などのトラブルに見舞われ、主催者様にご…

シャンソンの日に寄せて 伊藤一恵さんのこと

12月29日「シャンソンの日」に寄せて シャンソン歌手の深江ゆか様の御芳書『Adieu銀巴里~歌いつづけて~』(ゴマブックス株式会社)を、拝読しました。深江様の歌い手としての半生が、銀座7丁目にあったシャンソン喫茶「銀巴里」(1951~90年)の歩みとともに…

悼 堀内環様

悼 堀内環様 10月24日、シャンソン歌手の堀内環様が亡くなられたという。私は、氏の生前のステージを拝見することは叶わなかった。だが、手持ちのCDアルバムを見ると、フランス民謡から、「辻馬車」などの戦前のシャンソン、さらには戦後のジャック・ブレル…

悼 藤田順弘氏

悼 藤田順弘氏 世の中には、ありとあらゆる残酷さに溢れている。例えば、戦争はもちろん、差別や迫害、身近なところでは突然の余命宣告など、挙げればきりがない。こういった残酷さを楽曲として歌うとすれば、思想的になったり、啓蒙的になったりするかもし…

シャンソン歌手は、ドイツ・カバレットソングを歌うか

シャンソン歌手はドイツ・カバレットソングを歌うか 「Cabaret Song Night」於・神戸「サンジャン」を鑑賞しました。 これは、第一次世界大戦後からナチスドイツ成立までの、1920~40年代にドイツで活躍した作曲家の楽曲を特集したコンセプトライブでした。…

『がいこつ亭 109号』

札幌在住の三神恵爾様が発行する個人文芸誌『がいこつ亭 109号』に寄稿しました。今回は、佐賀県唐津市で観た青木繁の絵画や唐津焼の古い器について書きました。よろしければ御高覧ください。 誌面では、三神様の掌編「目の森」が、とても印象的でした。森の…

クルト・ヴァイルの本

クルト・ヴァイルの本 最近、ドイツの作曲家クルト・ヴァイルに関する本を立て続けに読みました。日本のシャンソン歌手のなかには、彼の楽曲をレパートリーにする方が見受けられますが、私は彼のことを何も知らなかったからです。 岩淵達治、早崎えりな『ク…