シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

「装苑」「芸術新潮」

最近発売された月刊誌で、シャンソンについて記されたものが数誌あるのでご紹介します。

装苑5月号』では、女優の古川琴音さんによる「古川琴音が装う、シャンソンの調べ」という特集が組まれています。古川さんは、お若いのに1940~60年代のシャンソンをお聴きになるそうで(以前、愛読書は石井好子さんの本だというのを読んだような…)、彼女が好きなシャンソンをイメージした服を着るという内容。グラビアに添えられた文章は、古川さんによるもので、彼女の楽曲への思い入れが伝わりますし、実際に聴いてみようかなという読者もいるかもしれません。
シャンソンを聴いたことがない、という人は沢山いると思いますが、シャンソンという音楽に対するレトロなイメージは、広く浸透しているのだな、と思いました。シャンソンをイメージした料理、フラワーアレンジメント、イラスト、建築etc、などができるかもと考えたら面白いですね。
ただ、シャンソンへの単なるイメージだけでなく、やはり楽曲の背景などにも興味を持ってほしいところ。例えば、画像の「パリの空の下」(雑誌に掲載されてるものなので画質をボカしてます)は、この楽曲が主題歌になったフランス映画、ジュリアン・ディヴィヴィエ監督「パリの空の下、セーヌは流れる」を観れば、また違うイメージになったのでは、と思いました。

装苑』は、大学生のときにはじめて読んで衝撃的だったのを思い出します。こんな奇抜な服を着た人生って素敵な気がする、と思って憧れてました。当時は、誌面でフェイクファーがよく取り上げられていて、私も真似てみたらヒグマのようになったのは良い思い出です。悲熊。

芸術新潮』では、3月号よりさかもと未明さんの連載「ラパン・アジル物語」が始まりました。
「ラパン・アジル」は、フランスにある1850年代くらいからあるシャンソニエ。フランスの観光名所として有名なお店ですが、日本のシャンソン関係の本では、この店より「シャ・ノワール」(黒猫)というシャンソニエばかりが取り上げられていて、意外と「ラパン・アジル」のことは知らないかも、と思いました。
現在は連載2回目で、さすが芸術雑誌だけあって、私もはじめて見るピカソが描いた「ラパン・アジル」の油彩画が載っていたりして、感激しました。私は、ロートレックの「シャ・ノワール」の絵より、ピカソの絵のほうが好きになりました。
さかもと未明さんは、漫画家ということは存じていましたが、調べてみるとフランス語でシャンソンを歌って、ミッシェル・ルグランの息子と曲作りをしたり、「ラパン・アジル」にも出演されているとのことでびっくりしました。才能のある方は多方面ですごいのだな、と感心しました。

芸術新潮』もまた、学生のころに一番のめり込んだ雑誌で、古本屋でバックナンバーを買い漁ってたのが懐かしいです。最近の誌面は、昔より内容を攻めてないなぁ、なんて思ったりしてます。
ちなみに、今月の4月号から本のサイズが小さくなってて、これまたびっくりです。今後、『芸術新潮』が大判だったのを知らない世代も出てくるのかと思うと、私もまた時の移ろい人なのだというのを実感する次第です。