シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

山本四郎

シルクの夢魔 山本四郎「浦島太郎」

先日の「【追悼】魅惑の歌声 山本四郎」は、多くの方に喜びの声をいただき、大変嬉しいです。ありがとうございます。

ちょうどCDの作業が一段落ついた時、山本四郎の新たなレコードを入手した。
「浦島太郎」
これは、童話「浦島太郎」の朗読劇を収録した子供向けのレコードだ。元は、昭和39年に日本コロムビアレコードから発売された「名作童話集」シリーズの1枚で、私が入手したのは昭和46年の再販盤である。
山本は、「浦島太郎は海の中 ジャブジャブジャブ♪」のごとき内容の歌詞を歌っており、それが朗読の合間の要所、要所に挿入されている。無論シャンソンの資料とは言いがたく、山本のファンアイテムである。
しかも、画像のクレジットにもあるように、山本の他に合唱グループの歌も挿入されているので、正直彼の歌がなくてもストーリーは成立する。しかし、あえて山本の歌が挿入されているのは、レコードを掛けながら子供を寝かしつける親に向けて作られているからだろう。
こうして聴いてみると、山本の歌声は夜によく似合う。シルクの手袋を差しのべて夜の世界に誘う夢魔のような、心地よさと蠱惑を感じずにはいられない。

ちなみに、浦島太郎役は日本最高齢の俳優・声優の久米明。彼の演じる浦島が若者から老人に変貌する場面などは、さすが鬼気迫るものがあった。

それにしても、山本は多くのレコード会社からレコードを出していることに気づく。おそらく、特定のレコード会社の専属歌手にはならず、企画ごとに単発の契約を交わしていたのだろう。そうなると、まだまだ未発掘の山本のレコードが存在するに違いない。いつか、きちんとしたディスコグラフィーを制作するのを課題としたい。

そして、このレコードは、私の子供が生まれて枕元で掛ける日まで大切にしようと思う(笑)