最近、新宿でシャンソンを歌ってらっしゃるソワレさんが企画する「木曜日のシャンソニエ」という生配信動画が面白い。
現在、YouTubeやツイキャスなどのメディアで2週間おきくらい?で開かれている。
これは、ソワレさんと、ピアニストのイーガルさんのお二人が、シャンソンを歌い、語り合う内容だ。
シャンソンの魅力を語るだけでなく、疑問や問題点にも言及しているのを観ていると、私はシャンソンを「語る場」を欲していたのだと、つくづく思う。
ところで、この「木曜日のシャンソニエ」では、配信を観ながらコメントを入力することができる。私などは、使えるものはバンバン使いたい性格なので、コメント欄を荒らす狼藉者のごとくコメントをする。
すると、それをイーガルさんが読み上げてくださる。こちらが申し訳なくなるくらい、逐一読み上げてくださり、それがお二人の話題に上ったりする。
お二人とも、シャンソンに真摯に向き合っているのが分かるゆえ、私などのつぶやきに親身になってくださるのが、大変嬉しい。
コロナで動画配信が普及し、演者と観客が拍手や歓声ではなく、コメントで繋がれるようになった。
新たなコミュニケーションのかたちが創造されたことで、いままでシャンソンについてリアルに語り合う場がなく、飢えていた私のシャンソン愛は満たされつつある。
私はシャンソンに関する文章を書いてきたが、「対話」にも興味が湧いてきている。
ソワレさんの「木曜日のシャンソニエ」
初回は、アコーディオン奏者の桑山哲也さんとピアニストのアニエス晶子さん
2回目は、イーガルさんと俳優の井上彩名さんがご出演だった。(井上さんの「ジジ・ラモローゾ」は不覚にも鼻の奥がツーンとなった)
次回は、3月とのこと。
そして、ソワレさんは越路吹雪の研究家でも知られている。
最近ソワレさんは、越路が生前リサイタルで歌ったもののレコード化されていない楽曲の数々を発掘しカバーした
「越路吹雪Book 2021」
というCDアルバムを発表された。
越路はロングリサイタルを年に2回催しており、それは彼女が死去するまで長年続いた。
それゆえ、レコードには収録されなかった楽曲が多くあるようだ。
それらをメディアとして発売しなかったのには、当時の製作側の意向もあったことと思う。
とはいえ、そういった楽曲を調べあげてリスト化するのではなく、実際に歌って再現しようとする試みがすごい。
歌い手だからこその挑戦であるし、ソワレさんの研究心も伺える力作だ。
アルバムを聴いてみると、シャンソンらしくピアノやアンサンブルをバックに歌ったものではなく、ピコピコした電子音もふんだんに入って編曲されている。
シャンソンで、いわゆる「今風」のアレンジというとネガティブな先入観を抱きがちだが、楽曲の雰囲気を壊さずに不思議と調和しているのが面白い。むしろ越路が生きていたら、そのアレンジで歌っていたのでは?と思うほどだ。
アルバムのタイトルは「Book2021」とあるから、今後も続くのだろうか。
それならば、ぜひとも越路がリサイタル歌った反戦のシャンソンを取り上げてほしい。
私が越路の最も評価するところは、彼女がリサイタルで反戦の歌を取り上げていた点である。
ソワレさんが「政治的言動」と捉えられることに好意的であるのを祈るばかりだが、私は今だからこそ、越路の華やかなイメージとは異なる他の部分を、もっと広く知ってもらいたいと思っている。