シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

88年「シャンソン・ア・神奈川」


興味深いカセットテープを見つけました。

『ブーケ・ド・シャンソン 愛の讃歌/枯葉』
(CBS/SONY 1994年)

こちらのテープは、1985年12月12日に神奈川県民大ホールで開かれた「シャンソン・ア・神奈川」(主催・大庭音楽事務所)の音源が収録されています。
さすが、日本でシャンソンが華やかな頃のコンサートだけあって、出演者が豪華です。

深緑夏代さん「パリ・パナム」
広瀬敏郎さん「八月のパリ」
池田かず子さん「メランコリー」
井関真人さん「おお我が人生」
戸川昌子さん「行かないで」
芦野宏さん「バラ色の桜んぼの木と白いリンゴの木」
淡谷のり子さん「愛の讃歌

堀内美紀さん「毛皮のマリー
伊東はじめさん「思い出の瞳」
瀬間千恵さん「貴婦人」
堀内環さん「バラ色の人生」
小海智子さん「年老いた夫婦」
中原美紗緒さん「聞かせてよ愛の言葉を
石井好子さん「枯葉」

【演奏】「岩間南平クインテット
【コーラス】谷古晴美さん、龍野めぐみさん、永井多香子さん

出演者と曲目共に、一流尽くしのプログラムです。淡谷さんに至っては、私世代では歴史の教科書に載っているような方なので、シャンソンのコンサートに出演されていたというのが、感慨深いです。ちなみに、淡谷さんのときだけは、藤原和矢さんがピアノ伴奏をつとめられてます。

日本がバブルだった頃、シャンソンは時代の高級志向の波に乗って親しまれていたそうです。
その当時の雰囲気を伝える資料としても貴重な音源だと思います。

貴重という点では、このカセットだけでしか聴けない曲があるのも嬉しいです。
深緑さんの「パリ・パナム」はリサイタル等の定番曲だったのに、何故か自身のレコードやCDアルバムには収録されていません。お弟子さん3名をコーラスに従えて、華麗に歌い上げてます。
池田さん「メランコリー」は最も貴重で、多分その歌声を聴けるソフトはこのカセットテープのみなのではないでしょうか。多分、レコードやCDを出されてない方だと思います。音に厚みのある品のある歌声で、思いがけずその魅力に引き込まれました。
芦野さんの優しい弾き語りによる「バラ色の桜んぼの木と白いリンゴの木」は、幸福感に満ちた曲。シャンソンは失恋や小難しいことを歌った曲だけではないというのを、歌い手としてのキャラクターに寄せて体現されて来られたのだと深く感じました。

それにしても、こうしたシャンソンのコンサートの音源をカセットに収録して販売していたものは、他にもあるのだろうか。
叶うことなら、色々な音源を聴いてみたいです。