
5月18日、岩見沢「シャンソン酒場Peuple」へ。
このところ、私のアカウントが店の宣伝じみてきている。
今年は、シャンソンの調査研究よりも、シャンソンを通じた出会いや発見を大切にする一年になりそうだ。

マスターは、フランスのCD3枚組の全曲集を用意してくださる。
これは、ベコーのデビューから晩年までの曲を網羅したアルバムらしく、私は晩年の曲を中心に流してもらう。
ベコーのシャンソンは、歌声とセンスのクォリティが生涯安定していたので、安心して聴ける。
「昔、札幌でベコーのコンサートを観た」
というマスターのお話から、
「札幌にはどんな歌手が来てたんですか?」
と尋ねると、ジュリエット・グレコ、シャルル・アズナブール、アダモ、ミレイユ・マチュー、ピア・コロンボ…とビッグネームが上がる。
「昔、店のバイトだった青年はシャルル・デュモンのレコードが好きだった。彼は東京に行ったが、里帰りをしたときに「東京ではデュモンのレコードを流す店なんてどこにもない」と嘆いていた」
なんと、美しいエピソードだろうか。
シャンソンのレコード1枚が「ふるさとの訛なつかし」のようになるなんて、胸がキュンとなる。
突然、マスターは店の奥にある沢山のレコードが収納された棚に近づくと、コレクションの数々をカウンターに広げてくださった。








マチュー、デュモン、コロンボ、アラン・バリエール、カトリーヌ・ソバージュ、ノエル・コルディ、セルジュ・ラマ、ラファエル、アダモのイタリア盤…。
これらは、マスターが札幌のレコードショップに買い出しに行って集めたもの。
岩見沢のシャンソンファンを喜ばせたいというマスターの思いが、レコード1枚、1枚にこもっている。
中でもピカイチだったのが、エヴァのレコード。

エヴァは、ドイツ出身でナチスの記憶が残るフランスで辛酸を嘗めながら音楽活動をして大成した歌手。
彼女の「いつ帰ってくるの」や「雨とウイスキー」などは、歌声に真摯なものを感じて、聴き入ってしまう。
「セルジュ・ラマの「灰色の途」は、日本人では超えられないね」
「酔っ払ってうるさい客も、ピア・コロンボのレコードを流したら一瞬で黙る」(岩見沢の客のマナーの高さよ)
「峰は、やっぱりマニアックな歌手が好きなんだな」
マスターのシャンソン語録はどれも楽しい。
以前、マスターに悩みを打ち明けたことがあった。
それが解決したことを伝えると、スパークリングワインをお祝いに開けてくださる。

レコードは、バルバラの1974年のライブ盤に突入。

ワインの甘味にグラスが進み、だんだんと私は泥酔していったが、もしかしたら私もまたバルバラのレコードに黙らされたのかもしれない。
「昔、札幌に「バルバラ」という店があって、そこもシャンソンのレコードを聴かせる店だった。余市の果樹園のおっちゃんが常連でシャンソンを聴きに来ていた」
やはり北海道にもシャンソンの良き時代があり、「シャンソン酒場Peuple」には今もなお、それが続いている。
そして私もまたその時代の一員に加わりたいと想うのであった。