シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。

早瀬一也(早瀬かず椰)さんのレコード

早瀬一也(早瀬かず椰)さんのレコード

このレコードは、1968年に発売された早瀬一也さんという人のものだ。
A面の「愛の夢」はさわやかな青春歌謡、B面の「雨の中の恋」はねっとりとしたムード歌謡である。
個人的には「雨の中の恋」が早瀬さんの本領のように思う。

多分、早瀬一也さんは流行歌手としての知名度は高くなかったのだと思う。
ただ、早瀬さんにはもうひとつの顔があった。
それは「早瀬かず椰」の名前で、新橋のシャンソニエ「アダムス」の経営者をつとめていたことだ。

「アダムス」のことは、深江ゆかさんの御芳書や竹下ユキさんのブログに詳しい。
毎夜、自分のお眼鏡にかなったシャンソン歌手を1〜2名のみ出演させて、自分は決して歌うことなく経営に徹した人だったという。
こうした極上のステージを提供するお店のコンセプトは多くの人に愛され、「アダムス」は伝説の店として語り継がれているそうだ。

私は早瀬一也さんのレコードを聴きながら、なぜ氏がシャンソン歌手にならずに、裏方に徹したのかを考えている。
やはりシャンソンには、人が一生をかけてしまう魔力のようなものがあるのだと思う。
人によってはその正体を、評論家やシャンソニエの経営者など、業界を支える側から知ってみたいと思う場合があるのだろう。
早瀬さんはそれを見つけたのか、あるいはお店を営みながらそれを追い求めていたのだろうか。
私もまた、シャンソンの魔力を突き詰めようと思えば思うほど、それは遠ざかっていくのを感じている。

ちなみに、早瀬さんは2004年に若くして急逝されている。