シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

蜂鳥あみ太=4号さんのライブを鑑賞

Barタートルヘッズに於ける、蜂鳥あみ太=4号さんのライブを鑑賞した。

 

退廃美の画家、ピエール・モリニエを彷彿とさせる、全身網タイツ姿でシャンソンを歌う蜂鳥さんのステージに、私はいつもシビれてしまう。
それは、蜂鳥さんのパフォーマンスの豊かさゆえだ。

今回のライブスポット、Barタートルヘッズはコの字型のテーブルが置かれただけの空間である。
蜂鳥さんは、その凹のなかに入って歌いはじめたが、やがて観客が盛り上がってくると、カウンターから顔を突き出したり、机上に乗って淫靡なポーズをとったり、さらにはそれを乗り越えて観客たちのなかに入っていったりする。
それをファンサービスと言うのは簡単であるが、そこには媚びや惰性、下品さがない。

そして、蜂鳥さんが歌う楽曲の数々も面白い。
蜂鳥さんのレパートリーは、シャンソンにとどまらず、ロシア、ドイツ、エジプトまで取り上げられているが、これらは自身の訳詞で歌われる。
例えば、ドイツのクルト・ヴァイルの「マンダレイ」は、男性社会へのアイロニーに満ちている。
「男は世界の消耗品」「エレクチオしたペニスは男の墓標」などのパワーワードは、聴いているだけで身がゾクゾクする。

奇抜な外見、洗練されたパフォーマンス、刺激的な風刺、この三ッ巴が蜂鳥さんの魅力である。

そして、蜂鳥さんの伴奏をつとめた、アコーディオニストの田村賢太郎さんにも胸が打たれた。


田村さんの伴奏は、音符を引き算して最低限の音で蜂鳥さんの歌に寄り添い、さらにそこに熱いパッションが加算されて、情熱的であった。
クルト・ヴァイルの「地獄の百合」では特にそれが生かされて、サビの部分はピアソラの「ブエノスアイレスの冬」を想起させ、私の心拍は高まった。
田村さんもまた、ライブのたびに観客をシビれさせる存在である。