シャンソン歌手の故・山本四郎さんのレコードを入手した。
1958年(昭和33年)に発売された「恋人よ今晩は(Gloria Lasso「Buenas noches mi amor」)/青い霧の夜 (Gerhard Wendland「Der weisse Domino」)」のEPである。
これは、ドイツのグラモフォンレコードが日本に進出するに当たって、第一号に作られたシングル盤であり、グラモフォンレコードの小会社であるポリドールレコードから発売された。
この時にレコード歌手第一号として選ばれたのが、山本さんと深緑夏代さんであった。
深緑さんの「悲しみよこんにちは/パリの夜」は、後にCD化されたが、山本さんの音源はこのレコードでしか聴くことができない。
ちなみに、二人はグラモフォンレコードと専属契約はしておらず、このシングルレコードのみの単発契約であった。
この当時の山本さんは、新人シャンソン歌手であり、中原淳一さんプロデュースによるデビューリサイタルを成功させたばかりであった。
しかしながら、その歌声は見事であり、フランク永井さんを彷彿とさせるムードと気品に満ちている。
おそらく、レコード制作に当たってムード歌謡路線が意識されていたのだろう。
A面の「恋人よ今晩は」は現在では「恋人よ、おやすみなさい」のタイトルで知られるシャンソン、B面の「青い霧の夜」はドイツの流行歌であり、ドイツのグラモフォンレコードへの気配りを効かせている。
ちなみに、A面はフランスの楽団、B面はドイツの楽団のカラオケを先取りし、それに合わせて山本さんが歌うという方法が採られた。
これは当時では画期的な方法だったらしく、山本さんは最初のうちは音合わせに骨を折ったが、徐々に日本の楽団には望めない音の良さを楽しんだという。
山本さんと深緑さんは、ライブの生のステージを大切にし、あまりレコードを残さなかった歌手であったが、日本のシャンソンブームのさなかで二人を求めるファンが多かったのが窺える。
この二人をレコード歌手に指名したグラモフォンレコードの先見の明にも驚くばかりだ。
ちなみに、来月7月は山本さんの七回忌に当たる。