「追悼 麻田マモル」
2017年3月8日に亡くなったシャンソン歌手の麻田マモルを取り上げる。
麻田マモル
1951年生まれ。
歌手としてシャンソンやオリジナル曲を歌い、ミュージカルにも出演した。
主に札幌を中心に活動し、すすきのでミュージックバー「Key Point」を経営していた。
晩年は、札幌から東京のシャンソニエであるシャンパーニュや蛙たちに出演し、毎年開かれる「アン・あんどうコレクション」や教え子のステージに立っていたそうだ。
2017年3月8日、病没。
麻田が生前発表したシャンソンのアルバムは「愛、歌、そして人生…」というレコード1枚である。A面は「愛の讃歌」や「ラ・ボエーム」などのよく知られた曲が収められ、B面では当時日本で誰も歌っていない最新のシャンソンが収められている。多分、現在でもレパートリーにしている歌手は少ないであろう曲ばかりだが、「Hey」「さらば恋人」などの佳曲は一聴の価値がある。
ちなみに、B面の曲の訳詞は全てアン・あんどうが行っている。
また今年発売されたアルバム「アン・あんどう訳詞コレクション 赤で感じる」にも、麻田が歌う「さすらい」という曲が収められた(「アン・あんどうコレクション」の音源)。麻田にとってはじめてのCDアルバムではないだろうか?(オーマガドキレコードのオムニバスアルバム「シャンソンでパリの香り」は除く)
晩年の麻田の渋い歌声を聴くことができる貴重な1枚だ。
私は昨年、すすきのの「Key Point」で麻田とお話しさせていただいたときのことを覚えている。画像のレコードは、このとき彼から頂いたものだ。
麻田は私に「東京から沢山のシャンソン歌手をゲストに呼ぶことができる店を、すすきのに作りたい」という夢を語ってくださった。私はそれが実現すると思っていたし、札幌で沢山のシャンソン歌手の歌声が聴けるのを楽しみにしていた。だが、麻田の訃報によって、その夢は潰えてしまった。
私は、麻田やかつて札幌でシャンソンを盛んにしようと尽力した嶋保子のことを思うと、札幌が本州と遠距離であるために、沢山のシャンソンのステージを見ることができない悔しさが沸き上がる。同時に私は、札幌を多くのシャンソン歌手が「行ってみたい!」と思ってもらえるような街にしていかないとならないと考えるのだ。
何の力もない、ただシャンソンが好きだというだけの私にどんなことができるのかは分からないが、麻田をはじめとする亡き人たちの「札幌とシャンソン」への思いは決して無駄にしたくない。
彼らの思いを、私がシャンソンと向き合うための灯火として、これからも抱き続けたいと思っている。