シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

岸洋子さんのお墓参りetc

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先日、岸洋子さんのお墓参りに行ってきました。
岸さんのお墓は札幌にある、というのは、私の中では都市伝説のような話でしたが、霊園の職員さんにも調べていただき、お参りしてきました。
歌碑とかあるのかなー、などと思いながら伺いましたが、本当に一般的な形のお墓でした。ですが、これもまた岸さんらしいような気もします。
この日は7月14日に近かったので、お墓の前で岸さんが歌う「パリ祭」をYouTubeで流して、参拝のひとときを過ごしました。
私の生まれた翌年に亡くなった岸さんとの、魂の交流を育むことができたような気がします。

さて、それと前後して、岸さんの珍しいカセットテープを入手しました。
1986年9月、福岡県の西中洲にあった「サパークラブ太宰」でのディナーショーの実況録音です。サパークラブというのは、お酒を楽しみながら歌や社交ダンスを楽しむ場所なのだそうです。
サパークラブ太宰」は、1978年頃創業、2007年には閉店したそうです。その「太宰」創業8周年記念のディナーショーの様子が収められています。

この当時の岸さんは、膠原病で倒れられるも復活し、84年に芸能生活25周年を迎えて、ますますの活躍が期待されていました。85年には、岸さんの隠れた名曲「コマンサバ/男の人生」が発売されてます。
しかし、このディナーショーの6年後に、岸さんは他界されました。

このディナーショーの音源では、岸さんが客席と和気あいあいと交流しているのが伝わります。また、ステージの合間に、突如オーブンマイクが始まったりと、なかなかブッ飛んだ構成です。
セットリストは以下の通り。

A面
「コマンサバ」(The shorts「Comment ça va?」)
「恋心」(Enrico Macias「L'amour c'est pour rien」)

アメリカ映画主題歌からシャンソンになった楽曲メドレー
I love Paris(Bing Crosby)
セ・マニフィーク(Cole Porter「Ce magnifique」)
サ・セ・ラムール(Tonny Bennett「ça c'est l'amour」)
I love Paris

「枯葉」(「Les feuilles mortes」)
「小雨降る径」(Tino Rossi「Il pleut sur la route」)

「夜明けの歌」

オープンマイク
「夜明けの歌」樋口さん(女性)、氏名不明(男性)

B面
「オラ、東京さ行くだ」(吉幾三)
「お祭りロック」(大木トオル)
「ラストダンスは私と」(山形弁で)

「夜霧のブルース」(ディックミネ)

「男の人生」(Dalida「Une vie d'homme」)

愛の讃歌」(Edith Piaf「Hymne  à l'amour」岩谷時子訳)

アンコール「希望」

エンディング「コマンサバ」


岸さんの代表曲とシャンソンの名曲、さらにはディナーショーらしいスペシャルな歌謡曲のカバーまで盛り沢山の内容です。
「オーブンマイク」では、観客2人がそれぞれ歌う「夜明けの歌」に直々にハモりを入れるというサービスぶりでした。だけど、多分歌った2人はセミプロのサクラだと思います。やたら歌が上手かったので。

そして、「オラ、東京さ行くだ」はぶっ飛びました。岸さんの東北弁ラップ、さすがに上手いです。
そして、特に印象的だったのが「夜霧のブルース」でした。ディックミネさんのオリジナルに対して、岸さんのは歌い方が明瞭で歌詞が聞き取りやすく、まるで彼女のオリジナル曲かと錯覚するほどです。
そして「愛の讃歌」は、越路吹雪さんが歌っていた岩谷時子さんの訳詞でした。岸さんは、永田文夫さんの訳詞で「愛の讃歌」を歌っていたので、珍しいと思いました。

時を経て、こうした貴重な音源を聴けるのは幸せなことです。次に、岸さんのお墓参りをするときは、このテープをお供えせねばと思っています。