シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

二宮眞知子様のステージを観覧

その方が楽屋からステージに姿を見せたときには、花びらが舞い込んできたと思った。

新宿「シャンパーニュ」における、二宮眞知子様のステージ。
赤いワンピースの二宮様は、まさに花であった。
二宮様は、ワンステージで5曲ずつ歌われたが、荻窪「リラ」での前歌で2曲ほど歌われる姿しか知らない私にとって、それは新鮮なひとときだった。

それにしても、二宮様のレパートリーの幅広さには驚かされる。
20世紀初頭のベル・エポックシャンソンから、ピアフ、グレコバルバラを経て、ブリジット・バルドーまで歌い上げていた。
二宮様は、フランスのシャンソンを日本の地で歌うだけでなく、その時の流れをも越境している。
二宮様は、国境と時代の水脈を流れる花筏なのだ。
紫色や白色のリラの花びらが散り、セーヌか隅田を流れる光景を幻視したように思った。

ご共演は、米田まり様。
米田様の「新カルメン」は、男につれなくされると、かえって恋情に燃え上がっていく女の歌だ。
これはマゾヒスティックである一方で、男を制圧する強い女の歌でもある。
米田様が、曲のなかの「ハバネラ」のくだりになると、目が生き生きと輝きだすのが印象的だった。
歌を通じて、米田様のなかの本能が立ち上がっていくのが感じられ、生命力に溢れたステージであった。