高野圭吾さんの絵画を手に入れた。
高野さんは、シャンソンの訳詞家にして歌手、そして東郷青児のもとで絵を学んだ画家としても活躍された。
この作品は、高野さんと交流があったシャンソンファンの方が急逝され、ご遺族様やゆかりのあった方々がご相談された上で、私にお譲りくださった。
深く感謝するとともに、沢山の方々の思いを受け継ぐということへの心構えを新たにした。
こちらの作品は、秋の河川敷の風景画である。
草が繁った河川敷に川が流れ、土手があって、煙突のある工場のような建物がいくつか見える。
最初は春の河川敷かと思ったが、じっくり見てみると色づいた草々の範囲が広いから、やはり秋の風景だろう。
江戸川の風景だろうか、小津安二郎の映画のカットにも出てきそうな、素朴な叙情的な作品だ。
この作品の叙情性は、草の緑と川の水の青、枯れ草の赤と黄のグラデーションから醸し出されている。
この色彩は日本画のものであり、例えば鈴木其一「夏秋渓流図」を彷彿とさせる。
思えば、高野さんは武蔵野芸大の日本画科を専攻していたのであった。
これまで高野さんの作品を何点か見てきたが、日本画の要素を感じるものをみたことがなかっただけに、この作品は貴重である。
高野さんの色彩感覚を知って、また少しありし日の彼に近づけたような気がした。