シャンソン愛

峰艶二郎(みね えんじろう)による、シャンソンについて綴るブログです。著書『戦前日本 シャンソン史』(1500円.完売)。htmt-mth@ezweb.ne.jp

嶋保子

北海道の伝説のシャンソン歌手・嶋保子

北海道で活動するシャンソン歌手の方とお話しすると、よく嶋保子の名前を聞く。

嶋は昭和24年、夕張生まれ。
シャンソン歌手の堀内環に師事し、昭和57年に札幌銀巴里でデビューする。
その後、自身の店であるシャンソニエ・アンを経営した
平成23年、病没。

嶋さんが今なお語り継がれるのは、その歌声と、札幌でシャンソンを盛り上げるために尽力したことが挙げられる。
「嶋さんの歌は本当に素晴らしかった」と語る方は沢山おり、同じ札幌の地にいながらその歌声を聴く機会に恵まれなかった私は、嶋さんはどんなシャンソンを歌ったのだろう?と想像するばかりであった。
しかしながら、YouTubeで嶋のコンサートの映像を見ることができたのである。
圧倒的な歌唱力、存在感が画面越しにも伝わり圧倒された。
リンクを貼りましたので、ぜひご覧ください。

また嶋は、シャンソン歌手やピアニストを数多く育成しており、彼らは現在も札幌で華々しく活躍している。
ちなみに札幌で活動するシャンソン歌手の佐藤みずえや、ピアニストの大和秀嗣は、嶋によって見い出された。

また、嶋は札幌でシャンソンを盛り上げるために、自身の店のゲストとして、多くのシャンソン歌手を迎えた。
石井好子、出口美保、高野圭吾、井関真人などのシャンソン界のビックネームが訪れたという。

また、嶋は地元のシャンソン歌手同士のつながりを深める役目もつとめた。
嶋の構成・演出で、昭和58年から10年間続けられた「不協和音コンサート」は、札幌で活躍するシャンソン歌手が集まりコンサートを開くというものであった。
出演者の中には自身の店を経営する者や、店に雇われて歌っている者もいた。
「不協和音コンサート」は、シャンソン歌手がお互いの店の垣根を越えて、札幌でシャンソンを盛んにしたいという目的の元に結集した奇跡のステージだったのである。

嶋の経歴を調べて感じたのは、かつて札幌にもシャンソンが盛んだった時代があったのだということだ。
もっと早く生まれたかった、もっと早くからシャンソンと出会っていれば…とは思わない。
嶋が札幌でシャンソンのために尽力したように、私がシャンソンを盛り上げるようなことをしてみたい!と強く感じた。
札幌でシャンソンをもっと多くの人に知ってもらいたい、シャンソン歌手が「札幌に行ってみたい」と思ってもらえるようになってほしい。
本稿を綴るために資料を乱読しながら、そんな思いが強くなっていった。

本稿で敬称を略したことをお詫びします。